レスベラトロールとサーチュイン

2011-07-11

2006年、英国の有名科学雑誌Nature(ネーチャー)に、レスベラトロールを与えると、哺乳類(マウス)に長生き効果が認められる*。という論文が発表され、世界中で、レスベラトロールへの関心が高まりました
*Baur JA et al., Resveratrol improves health and survival of mice on a high-calorie diet. Nature. 444(7117):337-42. (2006)

2006年に発表された、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のヨハン・オーワークス博士によるネズミの実験映像も世界中の研究者に衝撃を与えました。
レスベラトロールを与えたネズミは、スピードを落とすことなく走り続けることができました。 その結果、筋肉のミトコンドリア量が2倍に増え、それに伴い持久力も2倍に増えたというのです。この報告は、レスベラトロールがサーチュイン遺伝子の量を高めた結果だと考えられています(a)

米国ではヒトへの応用研究も盛んで、ペンシルベニア州メアリーウッド大学では、カロリー制限以外の方法でサーチュイン遺伝子をオンにする方法がないか実験が行われています。
カロリー制限も運動もしていないヒトに、レスベラトロールを1か月間、服用させると、
血管が柔らかくなる指標が6ポイント増加し、記憶力の実験では正答率が5ポイントも上がりました(b)

このようにカロリー制限をせず、サーチュインがほとんど眠っているようなヒトであっても、レスベラトロールを服用することで、スイッチがONになったのと同じ効果が得られることが報告されました。 レスベラトロールのような物質を使えば、近い将来、長寿薬をつくることが可能になるだろうと考えられています。

しかし、実際の薬の承認には、まだまだ、たいへん長い時間がかかります。 そのため、それを待ちきれないヒトもたくさんでており、現在、米国の薬局にずらっと並ぶレスベラトロールのサプリメントは、100種類以上の商品が2,000~3,000円で売られています(c)。 しかし、承認される医薬品と市販のサプリメントの品質の違いは大きく、有効成分の含有量が少ない、あるいは、吸収率が低いなどの問題が起きています。

わたしも最近服用を始めて気づきましたが、レスベラトロールはトランス型のレスベラトロールでないと人体へは吸収されにくいので、十分な効果を得るにはトランス・レスベラトールの含有量が記載されている製品を摂り、しかも、1日あたり50~150mgの摂取量が必要でしょう。

これまでの医学教育は、糖尿病や人工透析患者の食事指導に、たいへん厳しいカロリー制限を要求してきました。 しかし、大半は理想値であって医療者自身にも困難なものだったのではないのでしょうか。

レスベラトロールのようなお薬ができると、生活習慣病の治療も変わるでしょう。
人生は一度きり、可能な限り長く生きたい、これまでは健康のため控えめな食事をこころがけてはきたが、レスベラトロールを飲むことで、認知症にも糖尿病もならないとしたら、カロリーを全く気にせず、食べる楽しみを持ち続ける生活を選び、レスベラトロールを信じて飲み続ける生き方を選択する人もでてくるでしょう(d)

将来、みんなが薬を飲むようになると、平均寿命が100才の社会が実現するかもしれません。 定年もなく、70歳になっても元気で働き続けることができる、若い頃の経験をもう一度活かして社会に役立てることもできる、もう一度、大きな希望をもつこともできる、そんな高齢化社会をつい夢みてしまうのです。

出典と引用:文中 (a)~(d)は6月12日にNHKテレビで放送された、 あなたの寿命は延ばせる ~発見!長寿遺伝子~ よりナレーション部分の引用させていただきました。

 

 

 

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