おとなのADHDの診断

2012-10-03

大人(17歳以上)のADHDを診断して欲しいというご要望が増えてきましたので、
実際のわたしのクリニックでの診断上のポイントをお話しします。

まず問診のなかで現在の症状と問題をお伺いしています。
このときご本人が客観的に自分をみつめているとよいのですが、なかには楽観的すぎたり、
悲観的すぎたりする場合がありますので、配偶者など家族からの情報をお聞きしています。
そのため、ご本人だけの来院のケースでは診断を保留とさせていただくこともあります。

次に小児期からの症状を確認します。
本人が知らない、あるいは記憶していないことがよくありますので、通知表やお便り帳、
絵画、作文などを参考に、母親や兄弟姉妹からも情報を得ます。このとき症状のいくつかが
7歳以下から存在していることが大切です。しかし来年出版される予定の新しい診断基準では
症状の出現は12歳以下と改正されるため、わたしの外来でも小学校5~6年生までに症状が出揃っているかを確認しています。交通事故やけがの頻度、運動会での様子や修学旅行の参加状況、不登校やいじめの有無、提出物の遅滞状況、先生からの注意・指導が多くなかったか、その内容などお聞きしています。

上記の問診の次に、医師の診察を行い、DSM-IV-TRの診断基準を参考にしながら言動を観察します。学生の場合は、学校と家庭の双方で、社会人の場合は職場と家庭の両方で、不都合や困難などの不適応症状がでていることが診断要件です。成人で最も特徴となるのは、職場が長続きしないこと。学校選びや職業・職場選び、異性選びで、決断や判断が早すぎて後で後悔することが多く、同じ間違いを繰り返すことでほぼ確定診断へと至ります。

最後に、コミュニケーションの障害や対人関係の不得手、自閉性や幻覚、妄想がありはしないか、アル中の父親や口うるさい母親による心理的影響は受けていないかを確認し、これらを除外した後にADHDの診断を行います。

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