診断書について

2013-05-05

心療内科・精神科のクリニックでは診断書の交付を求められることが多い。
実際の診断についての、わたしなりの留意点を述べる。

初診から一定の期間は、状態像で診断することが多い。例えば、「抑うつ状態」が代表で、
最初から 「うつ病」と診断することは極力控えている。
診断の幅が最も広いのが「適応障害」だ。ストレス性障害で、いろいろな意味が
含まれているが、社会病名的なニュアンスもあり、ここでは割愛させていただく。

統合失調症は歴然と存在し、その症状は明瞭である。
同じように、躁うつ病も明らに異なる病態を示すが、
わたしのクリニックでは月に数えるほどしか出会いがない。
うつ病と不安障害はそれぞれ異なる病態を示す。両者の中間に近いところに、
パニック症候群が位置している。

いま話題の発達障害も、その存在はわかりやすく、すべての疾患群の基礎となるところに、
位置するので、いわば知的障害と同じような概念となり、生まれた時点でもつ。
そのため、他の病名との並列、併発が起きうる。
しばしば、「うつ病ですか、ADHDですか?」 と聞かれるが、
答えは、ADHDが先で、その後、うつ病を併発した、と答えている。
この場合、主診断はうつ病であり、小・中学生を除いて特別な場合以外で発達障害を
診断書に病名記載することは、わたしの場合ない。

ごく稀に、パーソナリティ障害の診断をすることがある。
この場合は、ご本人に直接ではなく、ご家族にまず説明し、その後、将来性を考慮し、
自身で気づき修正が可能と思われるかたには、御本人に説明するようにしている。
この病名を診断書や紹介状に記載することは、我が国ではほとんどないように思う。

診断については何年経っても判断に苦慮するケースが多い。
わたしの場合、DSM診断基準を携帯しているが、
先輩に相談したり、学会に問い合わせたりして研鑽を積むようこころがけている。

 

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