医師が奨める 放射線被ばく対策

被ばくという言葉を聞くと、あたかも原子爆弾や水素爆弾が爆発したときに発生する放射線が、
殺人光線のように体を突き抜けて人体をやっつけてしまう姿を想像される方が多いのではないかと思いますが、実は、被ばくの一番の問題は【活性酸素】であることは意外に知られていないのではないでしょうか。

一般のかたは、放射線に対する恐怖を、「人が放射性元素であるヨードやセシウムを吸収し、そこから放射線がでることによってDNAを壊してしまう」という理解をもたれる方が大半ではないかと思いますが、実は、放射線がでる→DNAが壊れる という順番の前に、「どうしてDNAが壊れるのか?」というメカニズムの説明を得る機会は、これまでほとんどなかったように思います。

放射線には直接、遺伝子を傷つける作用をもつ外部被ばくと、間接的に遺伝子を傷つける内部被ばくとがあり、今後は、内部被ばくへの対応が最も大切になってくると言われています(図1)。世界中の様々な論文から、ビタミンCをはじめとする抗酸化物質が放射線被ばくの障害を強力に防ぐことが証明されていますが、低線量の内部被ばくから大切な人を守るために必要となる、放射線被ばくへの正しい理解と解決法について一緒に考えてみたいと思います。

【1】放射線障害のメインはフリーラジカル

先程の、「どうしてDNAが壊れるのか?」という問いの答えになりますが、ヒトの体内の60%は水から構成されています。放射線が細胞内の水分子に当たることで、水分子は分解され、そこから電子を1つ放出し、OHのフリーラジカルが発生します。そのフリーラジカルが生体の分子を酸化することによって、遺伝子(DNA)を損傷するのです。あるいは酸化によって細胞膜を傷つけ、そこに穴が開き、そこから放射線が入り込むことで遺伝子を傷つけるのです。これが放射線による内部被爆の基本原理ですが、放射線を浴びること自体よりも、その結果として発生するフリーラジカルを消去することのほうが、ヒトの遺伝子への障害を防ぐことに大切な役割を果たすことがおわかりいただけたと思います。 この内部被爆は微量の放射線でも起きることが知られており、特に活発に分裂する細胞ほど影響を受けやすく、男性の精巣や胎児、成長期の子どもは影響が心配されます。ビタミンCを始めとする抗酸化物質を摂取することでフリーラジカルが強力に消去されることが、これまでの研究により明らかにされています。

【2】放射線障害を予防する抗酸化サプリメント

抗酸化作用がある栄養素の中でもサプリメントとして最も入手可能なものがビタミンCです。その他にも、アルファリポ酸、ビタミンA、E、セレン、ビタミンD3、レスベラトロール、CoQ10など抗酸化能力を高める栄養素はたくさんあります。単独の抗酸化サプリメントだけでなく、複数の種類を摂取することで抗酸化予備能をより高めることができますが、放射線障害の予防にはどうしても長期投与が必要になることから、簡易的にはビタミンC単独服用で良いでしょう。すべてを完璧にやろうとするとどうしても無理が生じますので、ビタミンCだけでも、何もしないより、はるかにましです。同時に抗酸化を促す食事や生活習慣が大切です。これらの考え方は、がんの予防と治療、アンチエイジング、放射線障害の考え方すべてに共通です。

[1]ビタミンCの効果に対するエビデンス
ビタミンCは強力な抗酸化物質として放射線障害を防ぐことが知られています。以下では間接的に放射能物質が体内に取り込まれて被ばくする「内部被ばく」を例に挙げ[1]ビタミンCが効果的であることを動物実験から、そして[2]ビタミンCを摂取することで人間が放射線障害に対して強くなることを示した研究について解説します。この研究で示されたビタミンCの摂取量は通常より多いものの、全て日常わたしたちが摂取することが可能な量です。

<1>ビタミンCは内部被ばくによる障害を防ぐ
1993年に米国ニュージャージー医科歯科大学放射線科とマサチュセッツ大学宇宙物理学研究所で放射性ヨウ素131をマウスに注射し、内部被ばくによる精子の生存率を調べました。精子は非常に早い速度で細胞分裂をするので、放射線障害を受けやすいとされています。ビタミンCをあらかじめ注射または食事として与えると、体内被ばくを強く抑制することが明らかになりました。
ここでマウスに注射したビタミンCの量をヒトに換算すると、体重70キロのヒトで3.5gに相当し、経口から摂取する場合は1回10gに相当します。
Narra VR,et al: Vitamin C as a Radio protector Against Iodine-131 in vivo.
J NuclMed 1993; 34:637-640.

<2>ビタミンCが人間の白血球を強化する
英国サセックス大学医学研究部門の細胞変異研究室では、ヒトから採血して分離した白血球に放射線を浴びせる実験をしました。被験者に朝食と一緒にビタミンCを35mg/kg(体重60キロの人で2.1グラム)を服用させ、1時間後に採血し白血球を分離しました。そして、その分離した白血球に放射線(コバルト)を浴びせ、白血球のDNAがどの程度壊れたかを調べたところ、ビタミンCを飲んでいたほうが壊れる量が全く少なかったのです。尚、この防御効果はビタミンC摂取後4時間で最大となりました。この研究の素晴らしいところは、採血した血液に放射線を当てるという行為であり、わたしたちがビタミンCを飲んでいて、そこにコバルトを大量被ばくしたのと同じ環境を実験室で再現したことです。この実験で、ヒトがビタミンCを摂取するだけで、十分に被ばく障害を防げる可能性を証明しました。
Green MH, et al: Effect of diet and vitamin C on DNA strand breakage in freshly-isolated human white blood cells.Mutation Research 1994; 316(2):91-102.

【3】科学エビデンスに基づいたビタミンCの摂り方

放射線被ばくによる障害を防ぐためには、体内の抗酸化予備能を高める必要があります。抗酸化物質をどれだけ摂ればよいかを決めるために、まず被ばく量を知ることが大切になります。
まず自然界で浴びる放射線の量は年間1.0ミリシーベルト(mSv)です。
放射線業務に携わる女性が妊娠を知ったときから出産までに浴びてよい放射線の限度は2mSvです。レントゲン技師などの放射線業務従事者は年間50mSvが限界ですが、5年間で100mSvを越えることはできません。
この基準にはいずれも「妊娠可能な女性」は含まれておらず、「妊娠可能な女性」でかつ放射線業務従事者は3ヶ月で5mSv以下とされています。
現在、見直しが行われていますが、暫定的に「妊娠可能な女性が自然界より2倍以上高い放射線量の環境で住む場合」と、「自然界より5倍以上高い放射線量の環境で住む場合」とで、サプリメントの摂取量を決めたデータをご紹介いたします。

(1)放射線レベルに問題はないが、内部被ばくが心配な一般の方のための
1日のビタミンCの目安
[1]ビタミンC 50~150mg/kg 1日3回~4回
例:体重60kgの成人で 1日 3g~9g
またはリポ・カプセル™ビタミンC 1回1包 1日1回

(2)妊娠可能な女性(体重50kg)が自然界より2倍以上高い放射線量の環境で
暮らすときの1日あたりの目安
[1]ビタミンC 8g 1回2g 1日4回
またはリポ・スフェリック™ビタミンC 1回1包 1日2回

(3)体重50〜70kgの人が自然界より5倍以上高い放射線量の環境で住む場合
[1]ビタミンC 12g 1回 3g 1日4回
またはリポ・スフェリック™ビタミンC 1回1包 1日2回

実際のビタミンCの飲み方
ビタミンCは腸管からの吸収率が低く、薬理学的効果を発揮するためには大量のビタミンC摂取が必要になります。 ビタミンCは1回に2.5~3.0g、これを1日に4~6回摂取したときに血中濃度が最大になります。しかし、ビタミンCのサプリメントは数グラムを越えると下痢や胃腸に不快な症状が出ます。そのため最初は1回1gを1日4回から開始し、少しずつ増量します。もし胃腸症状がでた時には少しだけ減量し、2~3日様子を見ます。何もなければ再び増量を始め、症状のでない最大量を摂取することにします。よくある質問ですが、ビタミンCによる尿管結石の合併は、ほとんどおこらないと言われています。 上段でご紹介した、リポ・スフェリック™ビタミンCは、高濃度ビタミンC点滴の代替として使用される、ナノカプセル技術により吸収率を高めたビタミンC製剤で、下痢や胃腸の不快な症状はほとんどありません。需要の高い製品で米国からの輸入品ですが、こころの先生クリニックでも取り扱っています。 詳しい説明は、ホームページ・トップ画面から “点滴の効果を経口投与で” リポ・スフェリック ビタミンCのタグから、是非、お入りください。


ソーシャルメディアで共有