生活保護と職業専門性

2011-01-22

1月21日に発表された、厚生労働省の集計によると、
2009年度に支払われた生活保護費が初めて3兆円を超えたという。

これまでは、年金だけでは生活できない高齢者世帯の申請が多かったが、2008年9月のリーマン・ショック以降は、仕事が見つからない人が生活保護に大量流入し、働ける年齢の受給者が急増したのだという。

厚生労働省は1月12日にも、昨年10月の生活保護受給世帯が141万7820世帯となり、述べ196万4208人が生活保護を受給したと発表している。 これは統計を取り始めた1951年以降で、世帯数では最高、人数でも過去3番目の高水準だったという。
現実に、2009年3月以降は毎月1万世帯以上の割合で生活保護世帯は増えている。

実は、このなかで病気や障害もなく働けるはずの年齢世帯が23万世帯もあり、2年間で倍増している。

昨日、わたしの外来を訪れた30代の女性が、「先生、わたしリストラされました。今月いっぱいで解雇です。しばらく病院にもいけません。」 と言い残して帰られました。
同じようなケースは、これまでも経験していますが、仕事を失うことが、容易に貧困に結びつき、社会からの孤立といった問題に結びつくことを目の当たりにみているだけに気持ちは暗くなります。

他方、退職しても数日で再雇用される人もいます。 就労の場は決してないわけではなく、資格のある人や職業の専門性の高い人は雇用されています。 就職に関して言えば、資格があれば学歴は高校卒で十分です。 4年制大卒ということで就職に結びつくことは、現在ではあまり関係ないようです。 そういう体験から、わたしは職業の専門性を10代のうちから身に着けておく必要性を痛感するようになり、外来の若者には、職業の専門性の身に付く高校や実学の身に付く大学に行くよう話をしています。

就労の失敗が貧困化に結びつきやすい現代社会では、まず10代で、

(1)  対人関係のスキルを身に着けておく
(2)  職業の専門性を高めておくこと (資格を含む)

が大切になると考え、外来にのぞんでいるのです。

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