些細な言葉に、敏感に反応しすぎていませんか?<前編>

2019-03-15

カテゴリー: 院長インタビュー

聞き手
聞き手

私の友達から、困った部下のことで相談を受けました。
部下の企画書にほんの少し注文というかアドバイスをしたところ、急に泣き出し、過呼吸になってしまったそうです。そして、翌日連絡も無く欠勤してしまったそうなんです。
このような状態に対して職場ではどのように対応したらいいのでしょうか?


院長
院長

いわゆる「拒絶過敏性」ですね。新型うつ病の代表的な症状の1つです。

※関連記事:「検査外来」)

家族や上司、恋人からの些細なコメントや批評に対し、敏感に反応し、悪くとらえて攻撃に転ずる症状なんです。
メカニズムとしては、相手のごく普通の言葉の中から「プライドを傷つけた、自分の能力や容姿を低く評価した、軽んじた」と否定的にとらえ、非常に過敏で激しく反応する事です。


聞き手
聞き手

「拒絶過敏性」というのですか?


院長
院長

例えば、
拒絶される内容は、約束の変更だとか、待たされる、すぐに返事がもらえなかった等、実に些細なことです。

家庭だとしたら、親から「最近良くなったね」と言われると、「以前は悪かったのかしら?」と、その誉め言葉の中に、本人が勝手に悪意を感じ取るでしょう。
また、夫婦であったとしたら、夫が「今日の料理は塩辛いね」とコメントをしたとすると、「だったら、もういい!2度と作らない。明日からはコンビニのお弁当を食べればいい!」と極端な反応をするでしょう。
友人関係でも、「痩せたね」と言われたら「前は太ってたの?」と悪い方に深読みしたり、
先ほどのご相談のように、職場で上司から「ここを直した方が良いよ」と言われただけで、「プライドを傷つけられた、人格を否定された」と大げさに感情表出したり、パワハラだと騒ぐ事があります。


聞き手
聞き手

この後、攻撃に転じるというのは、どういう事なのでしょうか?


院長
院長

はい、誰にも想像できない極端な反撃をしてきます。

受動的な攻撃としては、被害者のように泣く、そのまま帰る。翌日、連絡もせずに遅れてくる、無断欠席をする、
電話に出ない、メールに返事を出さない等、あたかも相手に非があるような抗議行動をとるでしょう。
その行為は終わることがなく、出勤したとしても、相手への極端な無視、周囲へのパワハラ訴え、長期の無断欠席、無断早退の常態化などがあります。

他方、
能動的な攻撃としては、「聞いてない」「知らされてない」「言ってない」と言い張って攻めに転じる等があります。

仕事では元気がないのに、傷つくと急に信じられないような攻撃性とパワーが出るイメージです。


聞き手
聞き手

これは治るんでしょうか?


院長
院長

結論から言うと治ります。
ですが、この症状を持つ人は、実に長い期間の治療(認知の修正)を要します。
過去に、人格を否定されたトラウマ体験を持つ場合がほとんどですので、どうしても、その記憶を引っ張ってくるのです。
その否定的な、結びつけやネガティブな想像力や没入の思考パターンを弱めるには、過去に触れない治療も大切ですね。


聞き手
聞き手

薬で治すんですか?


院長
院長

いいえ、原則は認知行動療法です。
初期のパニックのような発作がある時期には、お薬を用います。


聞き手
聞き手

治療のゴールは、何でしょうか?


院長
院長

「静かに黙って相手の話に耳を傾けることができる」
「素直に相手の話を受け止められる」人になる事です。時間がかかっても。


聞き手
聞き手

だいたいどれくらいの時間がかかりますか?


院長
院長

意外と長く、5年から7年ですね。


聞き手
聞き手

これは誰にでもあるのでしょうか?


院長
院長

ほとんどの人は、思春期によくある反抗期として、1~2年で通り過ぎていくか、成人でもごく短期に通り過ぎます。
このような、一過性の症状は拒絶過敏とは言いません。
20代・30代でこの症状をくりかえし慢性化するケースを、新型うつ病の拒絶過敏症状として扱っています


聞き手
聞き手

新型うつ病ですか。。続きは次回お聞かせください。
記事は<後編>に続きます。<後編>はこちらからご覧いただけます。

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